コーポレート・ガバナンスの東アジア・モデルを求めて : 韓国、中国を例にして
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概要
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東アジアのコーポレート・ガバナンス(以下ガバナンス)は、今大きな転換期を迎えている。ガバナンスの形態は、本来、各国の経済発展の歴史的経路に依存して多様である。ガバナンスとは、「企業が経営の執行・監督の仕組みを持つことによって、市場を通じて企業価値を取引しやすい環境、すなわち市場性を向上・維持する仕組み」である。米国型ガバナンスとは、株式を分散所有する株主が、集権化した経営者を市場のコーディネーション機能を通して、外部から牽制・監視する「市場コーディネーション型ガバナンス」である。換言すれば、株式所有が集中化し、企業の所有と経営が未分離の状況では、市場のコーディネーション機能を発揮することができず、経営者を牽制・監視することができないことを意味している。その場合には、政府の制度補完よって市場性を確保する組織制度型のガバナンス構造にしなければならない。東アジア諸国は、米国型ガバナンスへの制度改革を進めているが、本研究の目的は、第一に米国型ガバナンスの前提となる企業価値の市場性を確保することは可能なのであろうか、第二に、もしも市場性の確保が不可能なのであれば、どのように国家が制度補完しなければならないのか、第三にこれら問題意識を通して、東アジア型のガバナンス構造の特徴は何か、を抽出することにある。本研究では、(1)株式所有の集中と分散、(2)企業の所有と経営の分離、(3)経営執行と監督機能の分離という視点で、韓国と中国について歴史的経路を踏まえながら、ガバナンス構造について検討した。韓国と中国の企業経営の特徴は、所有と経営の分離する途上にあるとはいえ、株式所有構造は分散化せずに依然として集中化しており、企業の所有と経営、経営執行と監督は未分離の状態にある。韓国では、企業グループでのインサイダー・コントロールの構造にあり、中国では、経営者のインセンティブ重視や外部的ガバナンスの制度不備から、経営に対する牽制・監視機能が発揮できない状況にある。結論として、東アジアでは、外部的ガバナンスの発揮を市場のコーディネーションに依存する米国型ガバナンスの採用には限界があり、むしろインサイダー・コントロールを容認しながらも企業経営の実効性を高める組織制度的なガバナンス構造が相応しいのではないか、と考える。
- 国際ビジネス研究学会の論文
- 2004-09-30
著者
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