松くい虫防除のために空中散布された MEP の自然環境における動態
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概要
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松くい虫防除のために松林に空中散布されたMEPの落下量, 土壌での残留性, 水系での残留消長を調査し, 生物相への影響を評価した.下層植生の上部への落下量は散布量の約30%であった.土壌の有機物層での残留濃度は, 散布2日後では2.87∿56.3ppmで, 1年後には0.164∿0.546ppmに低下した.有機物層での濃度は鉱質土壌層の178∿1060倍であった.散布1年後の土壌残留量は散布量の0.16∿0.25%と推定された.水中におけるMEP濃度の最高値は, 散布当日の谷川で93.9ppb, 散布後最初の降雨時の谷川で24.4ppb, 河口で2.31ppb, 溜池で508ppbであった.散布によって谷川に落下した薬剤は急速に流亡した.森林内にとどまっていた薬剤は, 散布後最初の降雨によって流出した.降雨によるMEPの流出量は, 散布2日後に89mmの降雨があった例では散布量の0.71%, 散布5日後に36mmの降雨のあった例では散布量の0.0092%と推定された.溜池水中のMEP濃度は比較的高く, 1.1∿2.4日の半減期で指数関数的に減衰した.水系の底質での残留は軽微であった.水系で飼育されたコイでの残留は, 最高値は谷川で2.33ppm, 溜池で20.6ppmで, 水中濃度の変化にほぼ追随して推移した.MEPの水中と魚体中の濃度比は谷川で5.2∿2000, 溜池で70∿690であった.以上の結果およびMEPの昆虫類や水生動物に対する毒性から, 森林に空中散布されたMEPは, 樹上に生息する昆虫類だけでなく, MEPに感受性の高い森林の地上歩行性昆虫類および溜池に生息する甲殻類に影響を与え, 河口付近の海産甲殻類にも影響を及ぼす恐れがあるものと思われるが, 魚類に対しては, 残留濃度を一時的に高めるものの, 死に至るほどの影響はないものと推察した.
- 日本農薬学会の論文
- 1990-02-20
著者
-
田坂 美和子
山口県衛生公害研究センター
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岡 日出生
山口県衛生公害研究センター
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平松 禮治
山口県農業試験場
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古谷 扶美枝
山口県農業試験場
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梛良 實
山口県農業試験場
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梛良 實
山口県農業試験場:(現)山口県農林部
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古谷 扶美枝
山口県農業試験場:(現)山口県農林部
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平松 禮治
山口県農試
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