ミカンハダニのジコホル抵抗性と適応度との関係
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概要
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ミカンハダニのジコホル抵抗性と適応度の関係を分析するため, まず, 起源が同じ抵抗性系統と感受性系統のハダニの増殖力を25℃と30℃の温度条件下で比較した.この結果, 抵抗性系統のほうが感受性系統より増殖力が低かったが, とくに高温条件(30℃)やハダニによる寄主植物の被害がかなり大きい条件下では増殖力がより低下した.これは主として, 抵抗性個体(遺伝子型RR)の産卵能力が感受性個体(遺伝子型SSとRSまたはSR)より低いことによるものと判明した.つぎに抵抗性系統と感受性系統の1 : 1の混合集団をつくり, 約17世代にわたり薬剤に接触させない環境(25℃)で飼育を継続し, この集団のジコホルに対する感受性の変化について調査した.混合集団のジコホル感受性は7∿8世代目にはかなり高くなり, 13世代目以後は対照の感受性系統の水準近くまで高くなった.この結果から, 抵抗性個体はハダニの増殖に不利な環境だけでなく, 25℃の好適な環境下においても感受性個体より適応度が劣り, 自然選抜に対して生存上, 不利であることが立証できた.また, 前述の混合集団のジコホルに対する感受性の変化から, 抵抗性個体の適応値について電子計算機を用いたシミュレーションにより解析した.その結果, 抵抗性個体の適応値を0.75として計算した場合が観測値にもっとも近く, よく適合していた.
- 日本農薬学会の論文
- 1980-05-20