食道静脈瘤出血に対する胃上部切除術 (<特集>第11回日消外総会シンポII 食道静脈瘤の直達手術とその適応)

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門脈圧亢進症の三主徴,腹水,脾腫,食道静脈瘤のうち,現在腹水は内科的治療対象となり,脾腫も血行路廓清の一環として剔出が考慮されるべきものであって,外科的治療対象は食道静脈瘤のみである.したがって外科治療の立場からは,門脈圧亢進症は食道静脈瘤症と換言できる.門脈圧が亢進した病態の主要徴候として出現する食道静脈瘤に対して,門脈圧を下降させて治療目的を達する門脈下大静脈吻合術を典型とする血管吻合術は非常に効果的である.しかし,肝硬変性の門脈圧亢進症では,吻合術後に肝不全が出現しやすく,食道静脈瘤からの出血を防止できても,後に遺る肝機能不全のため血管吻合術は適用できない.私どもは154例の門脈下大静脈吻合術を中心とする門脈減圧手術の予後追跡の結果,門脈圧を下降して食道静脈瘤の治療目的を達する術式は,とくに肝硬変性門脈圧亢進症に選択すべきでないという結論を報告してきた.すなわち門脈圧の亢進状態は,肝に多量の血液を送りこむという合目的的病態であると把握し,門脈圧を下降させることなく,食道静脈瘤からの出血を防止する直達手術に術式の転換をして久しいのである.ここには食道静脈瘤の成り立ちより,胃上部切除術を典型とする直達手術を選択した根拠を述べ,その成績を報告する.
一般社団法人日本消化器外科学会の論文
1978-08-01

食道静脈瘤出血に対する胃上部切除術 (<特集>第11回日消外総会シンポII 食道静脈瘤の直達手術とその適応)

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