食道および噴門癌の開胸症例における術式と合併症の検討

概要

論文の詳細を見る
消化管の癌とくに開胸を要する食道および噴門部の癌患者は術前の栄養障害,心肺その他全身的合併症,加令による機能予備力の低下などみられものが多い.そして開胸あるいは開胸開腹という大きな手術侵襲を加えるため,術前における充分な栄養管理と合併症の把握,必要かつ最小限の手術侵襲,的確な手術手技と術後管理が望まれる.最近麻酔および術前術後の管理が発達し,手術成績が向上したとはいえ,縫合不全,心肺合併症をはじめとする合併症はまだ少なくない.著者らは最近1年7ヵ月間に経験した食道および噴門部の癌で開胸した38例(blunt dissection 3例を含む)の術前合併症,手術法,術後合併症などを中心に検討した.食道癌はその局所の進展所見や全身状態あるいは術者の理念や馴れに応じて種々の術式が施行されてよいわけであるが,治癒手術における廓清をどの程度にするのがよいかもっとも迷うところである.著者が鹿大1外科に赴任する前,約11年間勤務した癌研外科(梶谷鐶部長)においては術前照射は少なく,十分な廓清,分割手術による胸骨前胃挙上,左鎖骨上皮切,鉗子を使用しない開放性操作,絹糸による結節二層吻合が主流をなしていた.鹿大1外科においては前任の内山八郎教授のもとで,術前照射,内山式胃管形成器使用,後縦隔経路胃管挙上,一期手術,右鎖骨上皮切,内山式吻合固定鉗子使用,chromic catgut連続縫合が行われていた.著者は廓清,術後の合併症や再発,術後回復などの点から,胸骨後一期手術,non traumatic needleによる層対層1層吻合を理想とし,種々な術式をこころみてみた.ここに著者が着任した昭和47年11月16日以降昭和49年6月末(7月より新病院への移転開始)までの1年7ヵ月間の手術症例38例について反省をこころみた次第である.
一般社団法人日本消化器外科学会の論文
1975-01-01

食道および噴門癌の開胸症例における術式と合併症の検討

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク