Cimetidine静注によるアナフィラキシィーショック
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概要
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1978年著者の古巣ワシントン大学を訪ねたおり信頼できる外科医と内科医の旧友たちからCimetidineが消化性潰瘍の治療を大きく変貌させつつあることをトピック交換の会話で知った.1952年以来この疾患に取組み著者自身が罹患していた疾患でもあり,関心を強くそそられた.早速自己治験用に入手したCimetidineを自分や友人から依頼時使用してみて,アメリカの友人たちの言葉が納得できた.それはCimetidineの十二指腸潰瘍症例に対する投与によって,「Intractabilityによる手術症例が減少する」,「重篤な合併症を起さぬ限り手術の必要が減少した」,「穿孔や狭窄の合併症は今までどおりだが,出血による緊急症例は真夜中や休日に緊急呼集しないでも待機的手術として出血をコントロールできる」という内容の情報交換についてである.したがって,日本で購入可能となった1982年以降は投与症例も増加して上記の印象をさらに確かなものとして今日に至っている.Cimetidineは1975年Smith Klein and French Laboratoryの英国支社の研究陣で開発された.本剤はそれ以前1972年BlackらによってHistamine H_2 Receptor Antagonistとして開発されたBurimamide, Metiamideの副作用そのうちでも無顆粒白血球症などを克服するために,Metiamideの側鎖のS原子をCyanoimino基で置換して出来あがった薬剤である.1976年11月英国で市販開始し翌1977年8月にはアメリカ合衆国でもマーケットに現われ,十二指腸潰瘍に対して画期的効果を期待されて,同疾患の主力治療剤としての位置を急速に占めた.わが国では5年遅れて1982年l月18日からTagametの商品名で発売され,その使用量が急速に拡大しつつある.過去7年間に十二指腸潰瘍及び胃潰瘍症を主適応として全世界で120ヵ国,3,000万人以上が本剤の投与を受けてきている.アメリカ合衆国においては9,907例に対する投与により軽微な症状(下痢,はきけ,発疹など)出現率5.3%の副作用に関するデータがあるが,このたび私達が遭遇した副作用は重篤なショックなのでCimetidineの使用が急速に拡がりつつある現在,稀有なこの副作用が認識されることは臨床医学的急務と考える.致命的な不幸の結果を避けるためにわが国で初の報告として次節にしるした副作用の認識を本剤使用時つねに喚起し,万一ショックに陥ったら,ただちにショック対策の可能な環境下での使用が必要である.
- 一般社団法人日本消化器外科学会の論文
- 1985-04-01
著者
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