唯物論における"疎外"の意味とその現代産業社会の実存的経験との関係
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概要
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人間(Homo sapiens)の自己理解は環境と関係する. この自己理解の試みは, 各時代の時代像, 世界像に反映され, かつては, 秘密や説明不可能なものは神秘のベールに包まれ, 信者達は畏怖の念を抱いて, これらの事象に接した. 発見の時代が始まり, この宗教的世界像は崩れ, プロメトイスが理想像となり, 人間は, すべてを自己と関係づけて理解しようと試み, 宗教の終焉こそ疎外の束縛からの解放であると公言した. 唯物主義者達は, 人間の進歩, 人間の自己発見は, 一切のものから神秘性, 宗教性を剥奪することによって可能となる, と述べた. この小論では, 当時の西欧諸国の状況を考察しつつ, 唯物論的疎外の意味を解説し, この疎外観を脱することが人間形成, 自己認識にいかなる作用を及ぼしたか, また, この道が, いかにして,実存的な疎外の意味につながったか, という現代的問題が検証される.
- 産業医科大学学会の論文
- 1982-09-01