混合有機溶剤吸入曝露ラットの肝ミクロソーム中CYP遺伝子の検索

概要

論文の詳細を見る
【はじめに】本研究室ではこれまで、シンナーの代表的な成分であるトルエンを含む2成分混合有機溶剤蒸気をラットに吸入曝露し、血中溶剤濃度及び尿中代謝物の量を経時的に測定してきた。その結果、アルコール類との混合曝露ではトルエンの代謝が著しく促進されるという知見を得た。本報では、1-ブタノールートルエン系について吸入曝露実験を行い、肝ミクロソーム中のチトクロム(Cyt)P450の定量実験とCYP 2E1の測定を行った。【実験方法】Wistar系の雄ラット(8週齢)を単独曝露群、混合曝露群、対照群(n=10/群)の3群に分けた。ステンレス製の曝露チャンバー(容積 400 L)内に一定濃度の蒸気を導入し、吸入曝露を行った。曝露濃度は、1-ブタノール300ppm、トルエン500ppmとした。曝露時間は1日6時間、4週間(5日/週)とした。最終曝露直前と直後に解剖を行い、肝臓の一部をホモジナイズし常法によりミクロソーム分画を得た。次に、分画液の吸光度測定とLowry法によるタンパク定量を行い、単位タンパク量当たりのCyt P450量を算出した。また、RT-PCRによりCYP 2E1の発現量を測定した。【結果と考察】Cyt P450量は最終曝露直後の方が減少傾向にあった。また、Cyt P450量は単独、混合両曝露群とも対照群と比較して有意に高かった。さらに、単独曝露群のCyt P450量は、混合曝露群と比較して増加傾向にあった。CYP 2E1の発現に関しては全ての群において有意差は認められなかった。Cyt P450には多くのCYP分子種があることからCYP 2E1以外の分子種が関与していることが示唆された。従ってCYP 2E1以外の分子種についても検索し、代謝に関与する遺伝子を検索する必要がある。
産業医科大学学会の論文
2002-03-01

混合有機溶剤吸入曝露ラットの肝ミクロソーム中CYP遺伝子の検索

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク