第一停留場における電車混雑の周期特性
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概要
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大正11年、物理学者の寺田寅彦はその随筆において電車混雑について述べている。その結論は混雑した電車はますます混み、空いた電車は一層空く傾向にあるというものである。本論文は、この現象に数学的モデルを設定し、第一停留所における混雑の周期特性を引き出そうとしたものである。客の到着はポアッソン到着と仮定し、第n番目の電車に乗る人数Snに注目し、その定常条件をまず調べた。次に定常状態におけるSnのスペクトル密度関数と自己相関係数の姿をとらえようとした。スペクトル密度関数の若干の性質は数学的に解明できたが、詳しくは、電算機によらざるを得なかった。そして、その結果から、スペクトル密度関数は三つのタイプ、即ち、単調減少関数、単調増加関数、減少して増加する関数の三つに分類されるであろうことが予想された。三つの型のうち、単調減少関数は定員オーバーした客が後続の電車の混雑を引き起こしていることを表わし、単調増加の関数は寺田氏の論理に対応している。興味あることに電車の到着時間を上手に選べば、スペクトル密度関数は第三のタイプになり、混雑の相関関係がかなり減少する。停車時間は乗車人数に比例するとしたことや、第一停留所のみに限定していること等は現実から乖離している。しかし、寺田効果は本論文の結論からも十分示唆される。
- 社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会の論文
著者
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中塚 利直
首都大学東京
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中塚 利直
東京都立大学
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中塚 利直
首都大学東京大学院社会科学研究科経営学専攻
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Nakatsuka T
Tokyo Metropolitan University
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Nakatsuka Toshinao
Tokyo Metropolitan University
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