集団勤労作業の組織化と国民精神総動員 : 宮崎県祖国振興隊を事例として (<特集>教養の解体と再構築)
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概要
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この論文の目的は、宮崎県祖国振興隊の活動と集団勤労作業とが密接な関係にあることを明らかにすることにある。 この論文は三つの観点から考察を加えている。まず、第一点は宮崎県における国民精神総動員と祖国振興隊設置との影響関係である。県知事の強い主導で設置されたこの組織は、宮崎県における国民精神総動員を具体化するものであった。そしてそれは、中等学校を中心に組織されたものであり、宮崎県下のほとんどの中等学校がこれを組織していた。この組織の活動の中心は作業であり、その中にある教育的価値が重要であることが、当局において認識されていた。 第二点は祖国振興隊運動が各府県・国の政策に与えた影響についてである。この運動は、広く全国に知れ渡った。そのため、政府や多くの府県から祖国振興隊の活動についての視察があった。そればかりでなく、1938年3月24日には衆議院が政府に対して、宮崎県のこの運動を国家の政策として採用するように建議を行った。そのため、これに類するような運動がいくつかの府県で採用されるようになったのである。 第三点は、府県のレベルで現れたこの運動に類したものの検討である。ここでは、神奈川県、石川県、三重県などの例を紹介した。こうしたことから、1938年6月9日の集団勤労作業運動に関する文部次官通牒は、宮崎県やその他の府県で実践していた様々な集団勤労作業の運動の大綱を示したものであることを明らかにした。
- 日本教育学会の論文
- 1999-09-30
著者
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