家蚕における蛹期の高温処理と雄性不妊化との関係 : II.雄性不妊化をもたらす原因
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概要
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家蚕を用い,蛹期に雄蛹を24時間間隔で一定数選出し,38°Cの高温で24, 48および72時間処理し,処理期以外の期間は25°Cに保護し,さらにこの処理蛹からの雄蛾を正常雌蛾に交尾させ,雌雄の内部生殖器官内の精子を観察することにより高温処理による雄性不妊化の原因を追求した。(1) 精室内に誘起された形態の異常な有核および無核精子束のうち,異常有核精子束は化蛹後96時間目までの期間中に72時間処理した場合に多かった。異常無核精子束は化蛹後48時間目までの期間中に48時間処理および化蛹後120時間目までの期間中に72時間処理した場合に著しく多かった。(2) 貯精嚢内に誘起された萎縮した有核精子束および無核精子のうち,有核精子束の萎縮程度は軽微であったが,無核精子の萎縮程度は化蛹後144時間目に24時間処理,化蛹後48ならびに144時間目に48時間処理および化蛹後168時間目までの期間中に72時間処理した場合に著しかった。(3) 処理蛹からの雄蛾を正常雌蛾に交尾させると,産卵後になっても交尾嚢内の一部の有核精子束が解離されず,かつ無核精子の運動が緩慢な雌蛾がみられた。また,このような雌蛾では,解離した有核および無核精子ともに交尾嚢から受精嚢へ全く移行しなかった場合があり,移行した場合でも精子の量は少なく,かつ受精嚢内の有核および無核精子の運動はともに緩慢であった。このような雌蛾は化蛹後144時間目に24時間処理,化蛹後48および144時間目に48時間処理,また化蛹直後および化蛹後24時間目に72時間処理した雄蛹(化蛹後48時間目以降に72時間処理した雄蛾は交尾不能)を交尾させた場合に多かった。(4) 24および48時間処理した場合を対象として雄性不妊化をもたらす原因を解析した。その結果,貯精嚢内の有核精子束は正常かまたはわずかに萎縮していたにすぎなかったが,無核精子が著しく萎縮していた化蛹後144時間目に24時間処理ならびに化蛹後48および144時間目に48時間処理した雄蛾を正常雌蛾に交尾させると,雌蛾の交尾嚢および受精嚢内の精子は異常な行動を示し,さらにこのような雌蛾の産下卵の不受精卵歩合は著しく高かったことから,雄性不妊化をもたらす主因は有核精子自身の異常にもとづくものではなく,貯精嚢内の無核精子の萎縮と密接な関係があることを推論した。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1977-09-25
著者
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