家蚕における蛹期の高温処理と雄性不妊化との関係 : I.雄性不妊化をもたらす感温期間
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概要
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家蚕を用い,蛹期に雄蛹を24時間間隔で一定数選出し,38°Cの高温で24, 48および72時間処理し,処理期以外の期間は25°Cに保護することにより,蛹期に雄性不妊化をもたらす感温期間が存在することを明らかにした。1) 24時間処理では,死蛹および交尾不能蛾は処理時期によって異なるが,全くみられなかったか,みられた場合でも少なく,また成虫の形態は,いづれの時期に処理した場合でも正常であった。しかし,化蛹後144時間目に処理した雄蛾を正常雌蛾に交尾させると,不受精卵歩合は94.2%を示した。2) 48時間処理では,化蛹後48時間目に処理した場合は死蛹はみられず,交尾不能蛾は少なく,また成虫の形態は正常であった。しかし,この雄蛾を正常雌蛾に交尾させると,不受精卵歩合は93.9%を示した。化蛹後144時間目に処理した場合は死蛹歩合は39.6%,および交尾不能蛾歩合は75.9%で,また成虫は腹部が膨大し,翅は著しく萎縮していた。なお,この雄蛾を正常雌蛾に交尾させると,不受精卵歩合は92.0%を示した。3) 72時間処理では,化蛹後168時間目に処理した場合は死蛹歩合は53.5%を示した。また,化蛹後48時間目以降に処理した雄蛾は,上記と同様な異常形態となり,すべて交尾不能であった。なお,化蛹直後および化蛹後24時間目に処理した雄蛾を正常雌蛾に交尾させると,不受精卵歩合はそれぞれ57.7%, 85.1%を示した。4) 上記の24および48時間処理の結果から,化蛹後48∼96時間目および144∼192時間目は,高温処理により雄性不妊化をもたらす感温期間に当り,さらに,化蛹後144∼192時間目は48∼96時間目より,雄蛹に対する高温感受性の高い期間に当っていることが明らかとなった。なお,72時間処理の結果からは,高温処理により雄性不妊化をもたらす感温期間を定めることはできなかった。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1977-06-25
著者
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