アワヨトウの相変異に関連した行動の変化 : 第1報 機械的剌戟にたいする幼虫の反応
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概要
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アワヨトウの相変異についてはさきに詳しく報告したが(巌, 1962), 高密度型と低密度型の行動上の相違については十分の分析が行なわれていなかった。本報では低密度の時みられる淡色型幼虫と高密度下で生ずる黒色型幼虫の, 機械的剌戟に対する反応のちがいについて報告した。螢光灯照明下において一定の高さから幼虫を落下させるといわゆる偽死反応を示し, ついで逃避行動を起こす。淡色型幼虫では偽死の時間が長くしばしば5分以上にも及ぶが, 黒色型幼虫では大部分1分以内に逃避行動にうつり, 全く偽死反応を示さないものもある。この傾向は幼虫を1匹ずつ落下させても, 数匹一度に落下させた場合でもかわらないが, 後者では偽死の時間がやや短縮される。偽死から回復した後淡色型幼虫は暗所に向う傾向がつよいが, 黒色型幼虫は光条件にそれほど影響されない。しかし, 数匹まとめて落下させた場合には, 前者にみられる負の光反応は不明瞭になり両型の差がなくなる。一方, 植物上の幼虫に秒速5.5mの強い風を作用させると, この風による攪乱刺戟は偽死反応を誘起させるようには働かず, かえって植物上につよく密着しようとする行動を起させる。この植物への付着能力の点では淡色型幼虫の方が勝っている。以上の結果は, 低密度型(淡色)幼虫が不活発で非移動的であり, 高密度型(黒色)幼虫が活動的で移動性に富むという特性のちがいを反映したものとみることができる。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1963-06-15
著者
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