日本産カマバチ類の生態に関する比較研究 : 6. クロハラカマバチの越冬と発育
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概要
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松江市の水田と畦畔で越冬しているウンカ・ヨコバイ類に寄生しているクロハラカマバチの寄生率,越冬ステージと発育などについて1982, 1983, 1985, 1986年に調査した。クロハラカマバチはヒメトビウンカ,シロオビウンカの幼虫体内で越冬していた。また,ナカガワカマバチはヒメトビウンカ幼虫に寄生させると,それの体内で越冬できる。キアシカマバチは繭内で越冬したが,寄主であるトビイロウンカは越冬できないので,羽化後,死亡すると考えられる。クロハラカマバチの被寄生寄主数は12月中旬以降急激に減少した。寄生率は11月上旬から12月上旬に上昇したが,12月中旬以降は比較的安定した。春季における寄生率は調査年度によって9.3∼34.4%の範囲内で変動した。越冬期のクロハラカマバチの発育ステージは大部分が1齢幼虫で,一部が2齢幼虫であった。これら越冬世代幼虫の寄主離脱開始は4月の中旬から下旬の間となった。この寄主離脱時期は春季の気温の影響をうけていた。また,寄主離脱期は寄主の5齢幼虫から離脱したものが成虫から離脱したものより早かった。成虫の出現開始は幼虫の寄主離脱開始後約3週間後の5月上旬から中旬であった。寄主であるヒメトビウンカ第1世代幼虫の孵化開始はクロハラカマバチ成虫出現開始の約1週間前にあたり,クロハラカマバチの成虫出現期と同調していた。クロハラカマバチの繭からの成虫出現時刻は大部分が6:00∼9:00であった。越冬世代の成虫の性比は雌にやや偏っていた。
- 1989-02-25
著者
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