嗅覚受容体の発現に依存した嗅神経回路形成のメカニズム(<総説特集>嗅覚神経系の機能構築-3)
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概要
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嗅覚系では数十万種類に及ぶ匂い分子を、ゲノムの約2〜3%を占める約一千種類の嗅覚受容体を用いて識別している。匂い分子は、その官能基を介して複数の嗅覚受容体と異なるアフィニティーで結合し、嗅球においてはそれら受容体に対応する糸球が、結合の度合いに応じて異なる強さで興奮し、その興奮の空間的なパターンの相違を脳が識別すると考えられている。この様な嗅球におけるトポグラフィックな糸球マップの形成は、個々の嗅細胞が一千種類の受容体遺伝子の中から一種類のみを発現していること、及び、同じ種類の受容体を発現する細胞が二千個存在する糸球と呼ばれる投射先の中から特定の糸球を選んで位置特異的に軸索投射すること、という二つの基本的ルールにより支えられている。本稿では、嗅覚系における神経回路形成のメカニズムを、嗅覚受容体多重遺伝子に見られる相互排他的な遺伝子発現と、それにより規定される軸索投射の観点から考察する。
- 日本味と匂学会の論文