アジュクル族の富者儀礼 : 年齢階梯制社会における階層化の挫折
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概要
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本稿は,コートディヴォアールのアジュクル社会で19世紀中頃に始められた富者儀礼(アンバンジ)の変化の考察である。アジュクルは政治的に無頭の社会で,村が政治的単位である。村の政治は年齢階梯の第7段階に達した長老(エベブー)を中心に行われ,<平等>がその原理である。19世紀のヤシ油の交易による経済的繁栄は,この平等性を崩す可能性を有していた。儀礼を行った者にブレンビという称号を与え権威を認める富者儀礼は,こうした背景のもとで階層化への試みととらえることができる。しかし,階層化分化が存在していたゴールドコーストの都市国家で行われていた地位上昇儀礼をモデルとしたアンバンジは,逆に富裕な人びとが富を見せびらかすことを制限するものとなった。儀礼はその後男性のほとんどが成人儀礼の直後に行う,もうひとつの通過儀礼へと変化した。これらの変化が年齢階梯制社会への儀礼の導入そのものに起因することを分析する。
- 1995-09-30