「位牌分け」慣行の変化における僧の関与 : 習合の微視的過程についての一分析
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概要
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本稿は,「位牌分け」という地域的先祖祭祀慣行に対する檀那寺の僧の介入の分析を通して,民俗知識と宗教的専門家の知識の交流過程を分析したものである。「位牌分け」慣行においては,嗣子のみならず死者の既婚の子全員が婚家・分家などにおいて亡親の位牌を祭祀するが,近年,婚入者亡親の位牌を家の成員の位牌と区別して並べるという指導が檀那寺の僧侶によってなされ,民俗意識として定着しつつある。本稿ではその背景や諸要因を明らかにした。「位牌分け」を中心とする地域的先祖祭祀体系は,外部のより影響力の強い先祖祭祀や商業的先祖祭祀の影響を受け,今や解体しつつある。僧の介入の変化をもたらしたのは,地域的先祖祭祀体系が再編される過程で生じた,宗教的権威に対する社会的需要であった。僧は,このような社会的需要に応え,「位牌分け」に対する自らの知識を組み替え,介入を進めたのである。
- 日本文化人類学会の論文
- 1994-09-30