船世帯民再考 :家船民の陸地との交渉の分析を中心に
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿は,海上の船だけをその居住とし,主に漁業を営みながら生活してきた船世帯民の歴史を,彼らの陸地との関係から再構成してみることを目的としている。その方法としては,まず,船世帯民と陸地民との関係を,「政治-陸地権力との力関係」と「経済-交換システム」というキーワードを用いて分析していく。また,近代における船世帯民の「陸地定着」という大きな「出来事」を境目とし,全体を「定着」以前と以後とに分けて考察する。そして結論として,船世帯民の「陸地定着」が近代国家の形成や市場経済システムの拡大と共に急激に進められる一般的傾向であることは認めながらも,一方では,今日もなおかつ船世帯生活を行い続けている漁民が少なからず存在していることや,彼らの多くが近代以降「新しく形成され」たことを明らかにすることによって,「定着」とは時代を生きる「選択=戦略(ストラテジー)の一つにすぎないことを示す。
- 日本文化人類学会の論文
- 1996-06-30
著者
関連論文
- 漁民の身体技法 : 伝統的「わざ」と先端テクノロジーの併用
- 漁民の身体技法--伝統的「わざ」と先端テクノロジーの併用
- 船世帯民再考 :家船民の陸地との交渉の分析を中心に
- アジアの家船に関する比較研究(その1)
- 関東地域コリアンの過去と現在に関する小考-移住と結婚と死を中心に-
- 関東地域コリアンの「民族教育」と「民族的アイデンティティ」についての小考
- 近代国家と漁民
- 「近代的家船」の出現に関する歴史人類学的考察(1)
- 帝国主義と漁民の移動 : 広島県豊島漁民の「朝鮮海」出漁に関する歴史人類学的考察(2)(斎藤志郎先生退職記念号)
- 帝国主義と漁民の移動 : 広島県豊島漁民の「朝鮮海」出漁に関する歴史人類学的考察(1) (国際関係学部開設10周年記念号)