南極人工地震観測用ペネトレーター電源部の低温(-15°C )試験
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概要
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南極域で人工地震探査を行う時,クレバス地帯での安全行動を考慮すると,地上アクセスを必要としない投下式地震計の開発が急務である.そのため,ヘリコプターからGSS(Ground System Segment)と呼ぶ無線モジュール付きの地震計センサー部を投下して設置し,ADCS(Automatic Data Collection Segment)と呼ぶ,ヘリコプター内から無線を用いてGSSの時刻同期やメモリー保存データを回収できるシステムの開発を進めてきた.このような,投下型地震計を南極ペネトレーター(以下ペネトレーターと略記)と呼び,第43次南極地域観測隊・夏隊(第43次夏隊)で使用したが,電源部に不具合があり,実用に至らなかった.本報告は,その原因を明らかにするとともに,南極人工地震実験での実際的な運用プランにおける電池寿命を再検討するために実施した低温試験について報告する.上記不具合は,電池パックに組み込んだ逆接続防止回路の複合トランジスター部で3.6mAという電流が常時流れたことによって,約3割の容量を輸送中に消耗してしまったことが主要因だった.この複合トランジスターをダイオードに変更し,塩化チオニールリチウム電池セルの容量を16.5Ahから19Ahへ増量し,-15°C の恒温槽内にGround System Segment(GSS)を設置して負荷を与え,寿命を調べた.初期設定後の20日間は待機(sleep)状態(Aモード)を続け,起動(wakeup)後は12時間ごとに,無線機ONのコマンド待ち受け状態(Bモード)とAモードを切り替え,Bモードの時間帯において,1日約1-2回,コマンド送受信・データ転送(Cモード)を行う,という運用プランをプログラムした.無線機を含めたGSSの消費電流は,Aモードで60mA, Bモードで135mA, Cモードでは230mAだった.実験の結果,2直列8並列の電池パックを用いて,-15°C の環境下で50日以上の寿命を持つことが確かめられた.GSSメモリーに収録された爆破地震波形4イベント(48kbytes)のデータをADCSに回収するために必要な時間は約40秒で設計通りだった.GSSの寿命のめどはCモード時における電圧が初期の6.0Vから低下して4.8Vを下回るあたりであるが,それまでの50日間にデータ回収操作を無理なく50回以上行うことができた.
- 2004-11-30