特別講演 放影研と原爆後障害研究について
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概要
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原爆投下後,日米合同調査の開始,それを受けて1947年,原爆傷害調査委員会(ABCC)の設立,そして1950年の国勢調査に基づいた被爆者の実態調査などを経て,寿命調査集団,胎内被爆者集団,被爆者の子供の集団の設定を行い,疫学調査が始められた. それと並行して,病理学的調査,遺伝学的調査研究がなされた. その後,昭和50(1975)年にABCCから放射線影響研究所(放影研)に研究が引き継がれて,原爆被爆者の健康に関する追跡調査を継続して行っているが,1996年頃より,被爆二世の健康影響調査に関する研究を開始することになった. 被爆二世健康影響調査では2つの方法をとった. 1つは郵便調査であり,それに続く健康診断調査である. 調査するに当たっては,科学的にはもちろんのこと,特にプライバシーの問題に配慮し,倫理面からも検討を加えた. 調査期間は4年間で,現在3年目の調査に入ったところである. 調査結果はまだ出ていないので,結果については述べないが,倫理面を重点的に考えて行った調査研究の一つとして報告する. 本講演では,上述のこの被爆二世調査を主眼に置き,筆者が行政官時代と放影研を通じてかかわってきた次の三点について述べるが,これらは後傷害研究の基本ともなっていると考える. 即ち,1.線量体系,2.倫理問題,3.被爆者との信頼・協力関係の三点である.