イギリスにおける簡易生命保険の盛衰
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概要
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19世紀中葉にイギリスの生命保険会社によって開発された簡易生命保険事業は,創設の当初から一定の進歩的な性格を有しており,低所得者層に広く受け入れられ,種々の問題を抱えながらも,20世紀前半を通じて発展を遂げた。これについては,たとえば,W.ベバリジが,『社会保険および関連サービス』の中で,簡易生命保険の問題点を指摘しつつも,その肯定的な側面を的確に指摘している。イギリスの20世紀後半の簡易生命保険事業は,社会保障制度の発展,国民所得の増加,銀行振替制度の普及,などの要因によって,衰退の道をたどることになったが,人口の高齢化が進行していくなかで,集金制が有する多様な社会的側面が高齢者のニーズと生活事情に合致し,なお独自の地位を確保している。これに対して,国営事業として発展を遂げてきた日本の簡易生命保険は,民営化への途上にあり,新しい段階に到達している。また,フランスでは,新しい生命保険契約募集方法としてのバンカシュランスが,20世紀末から注目されるようになり,その重要性を増してきている。