雑草の発育生理学的研究(1) : アメリカセンダングサの発芽と光週期的花芽分化
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概要
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[Author abstract]Some developmental-physiological characteristics of an alien weed, beggar-ticks, which is at present wide-spread in our country and familiar to us with its rank growth and the annoying tick-like seeds are investigated in the present study. 1) The germination of beggar-ticks seeds are favoured by relatively high temperature. They cannot germinate below 20℃ and have an optimum germination temperature of around 35℃. 2) A definite pattern of seasonal changes in germination of the seeds was observed in the monthly germination tests. They germinate partly in the months from March to August and stay dormant in the remaining months. At 35℃, however, the seeds harvested in the previous year cannot maintain complete dormancy throughout the year. 3) By removal or chemical rupture (by means of sufuric acid) of seed coat layers, or by washing or bathing the seeds for a day, the germination of seeds is improved remarkably. 4) The seed diffuzate inhibits the germination of the intact seeds but not the seeds deprived of seed coats. Further investigations are required to clarify the mechanisms of inhibition occurring in the seed coat. 5) Germination of the seeds, especially those of the dormant seeds shortly after harvest, is remakably facilitated by application of gibberellic acids. 6) The flower initiation of beggar-ticks plants never occur under condition of total long days. They require at least three days of eight hour's photoperiod for flowering and the critical day length for the short day induction appears to be between 12:45 and 13 hours so far as the present investigation goes. 7) The plants with fully developed cotyledonary leaves are the most sensitive to the short day induction. They initiate visible flower buds in two weeks after the short day treatment for one week. 8) The germination (or the dormancy) of beggar-ticks seeds are controlled by many external and internal factors and it may be thought that in the field they germinate partly and sporadically in the season. On the other hand, the flowering of beggar-ticks plants are controlled principally by the short photoperiods and the flower initiation occurs simultaneously in the population when the day length becomes short enough to induction.[著者抄録]都市周辺に普通にみられる外来雑草のアメリカセンダングサについて、発芽と開花の基本的な発育生理学的特性を調べた。1. この植物の発芽は、かなりの高温によって促される。20℃以下の温度では、年間を通じて全く発芽せず、これまでの実験範囲では、35℃前後に発芽の最適温がある。2. 室温区、30℃の亜適温区、および前々年度の古い貯蔵種子では、発芽に明らかな季節的消長を示し、3月~8月には、60%以下の低率の発芽をし、9月~2月は、大体休眠期である。しかし、35℃に置かれると、前年産の新しい種子の場合、発芽は「異常」に高くなり、完全な休眠を示す月がほとんどなくなる。3. 種皮除去、種子の充分な水洗(1日以上)、温浴浸漬、および濃硫酸などによって、発芽が大いに促進されることは、この植物の発芽抑制機構が種皮(果皮)にあることを示す。4. 種子浸出液が種皮をもつintact種子の発芽を抑制することは、この抑制物質が、種皮にある別の物質と結びついて働くと考えられるが、これらの物質的究明は、今後に残されている。5. ジベレリンは、明らかに発芽促進効果があり、特に新しい(休眠機構が充分に働いていると思われる)種子では、効果がいちじるしい。6. アメリカセンダングサの花芽分化は、長日では全く起らず、短日にかなり敏感に反応して起る。本実験の範囲では、花芽分化を誘導するに必要な短日の日数が、もっともsensitiveな状態で、8時間短日3日であり、また、短日の限界日長は、12時間45分と13時間の間にある。7. 幼植物、特に子葉が充分に展開した状態が、もっとも短日に敏感に反応し、1週間の短日処理後、2週間目に肉眼で区別できる花芽が形成される。8. アメリカセンダングサの発芽は、多くの要因によって制約され、自然において、気温、光以外に地形的な微気象、水分関係に左右されて、3月~8月にかけて不斉一に発芽するのに対し、その開花は、日長にsensitiveで、発芽期や発育の違いにもかかわらず、地域群落が、限界日長以下になると、ある程度斉一に日長に感応して開花結実すると考えられる。
- 1973-03-15
著者
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