マーケティングにおける交換の性質の再吟味 : マーケティング研究及び消費者行動への示唆 (清水猛教授退任記念号)
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概要
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清水猛教授退任記念号近年,マーケティングにおいて企業と顧客との「関係性」,両者の「価値共創」といった側面が強調されつつある。こうした中,マーケティングに対する見解には「売り手の活動」「売り手と買い手の相互作用プロセス」という異なった視点が依然として併存しているように思われる。本稿ではマーケティングに関する2つの視点の併存という問題に焦点を当てて検討することを通じ,マーケティングにおける交換について,改めてその性質を吟味する必要があることを明らかにする。本稿ではマーケティングの特徴は売買というタイプの交換の性質によって規定されているとの認識の下,売買の性質について,1) 経済学者メンガーによって提唱された財と貨幣の販売力の大きさの差,2) 売買における価値消失と発生のタイムラグ,3) 売り手と買い手の専門的な知識やスキルの差の3点より考察する。そして,売り手は商品という形での具体的な使用価値仮説の提供,買い手は購買段階における使用価値仮説の受容及び使用段階における使用価値の確定という異なった役割を担っていることを確認する。さらに,売り手は具体的な使用価値仮説の形成という難題に取り組むために,そしてまた売買を実現することによって自らの価値を純増させる必要があるために,売買という交換を実現するための活動に買い手よりも積極的に関与せざるを得ないということを明らかにする。こうした考察を踏まえ,マーケティングに関して2つの異なった視点が併存する原因について論じる。そして最後に,本稿での考察に基づき,マーケティングを取り巻く環境が急速に変化しつつある中,マーケティング研究及び消費者行動研究の今後の在り方について展望する。
- 慶應義塾大学の論文
著者
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