チェコスロバキアにおけるバウチャー方式民営化の構造と問題点 (清水猛教授退任記念号)
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概要
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清水猛教授退任記念号1990年11月チェコスロバキア特有の国有企業民営化の基本構想がトリスカ(Triska, D.) によって発表された。これがバウチャー方式民営化論の原型であり,国家から国民への大規模企業の所有権移転を迅速かつ平等に実施する計画であった。この構想が具体化されて,民営化第1波の期間中(1992年3月~12月末) にチェコとスロバキア両共和国の成人有資格者の約80%,850万人が民営化企業への持分参加に登録し,これに対し,1,491社の株式,約3億株が倣出された。本稿は,かかるバウチャー方式民営化の生成と構造について問題点を指摘しつつ,3つの局面から分析する。第1は,バウチャーの性質,国民へのバウチャー配布に決定的役割を果たした「投資会社」と「投資基金」の成立とその意義,「投資基金」を設立した各金融グループの取得したバウチャーおよび株式の集中度とその傾向,さらには典型的「投資基金」の財務分析で示された活動実態,などを銀行系と独立系の相違を踏まえて実証的に分析・検討する。第2は,系列「投資基金」を媒介として企業群を統治する大銀行とこれを支配する国家との融合構造,すなわち脱共産主義体制のコーポレート・ガバナンスについて,銀行中心の「ヒエラルキー構造」の観点からアプローチする。第3は,「不連続な時間の模索過程」として特色付けられた仕組みの下で,「株価設定」とその「調整」を模索するメカニズムと「ルール」について明らかにする。そのうえで,「投資基金」と個人投資家の「ポートフォリオ戦略」の結果を示す。
著者
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