チェコスロバキアにおける国有企業の民営化プロセスについて
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概要
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共産党政権崩壊後のチェコスロバキアにおいては,体制転換の中心問題は,私的企業の設立や市場環境の整備のみではなく,むしろ既存の「制度機構」変革であった。具体的には,「国有企業の民営化」実現であった。激動の90年代初頭,クラウスの急進的構想が採用され,「国内資本の不足を克服する最良手段」として開発された「投資バウチャー」民営化方法が展開されることになる。 92年に同国は,チェコとスロバキアに分裂。前者は96年までマクロ経済変数では「健全経済」の状態を示していた。だが,それ以降,流動性危機に直面し,経済は「構造的弱点」を露呈するに至る。その原因は,「ショック療法」とも言われた急速な国家主導の企業民営化にあった。本稿はかかる民営化のプロセスについて「所有関係の根本的変化」の観点からアプローチし,「法的枠組み」と経済的事情とを関係付けて構造的に検討する。全体は三つの部分から構成される。まず,実施された最初の民営化,つまり財産返還法と小規模民営化法を取り上げ,その内容と問題点を追求する。次は,本稿の主題である大規模民営化法を対象とし,ここでは,民営化の範囲と計画規模,その具体的スキーム,実施するための標準的方法,その問題点を検討する。最後は,民営化問題において所有権移行を制度的に保証する,すなわち民営化の担い手としての「国有財産管理基金」の意義と課題,機構の特色,その評価について言及する。
- 2001-02-25
著者
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