欧州議会選挙法改正と欧州議会の対応 : 1998年欧州議会選挙法案とEUの代表民主主義
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
欧州議会はその議員選出法において、新たな動きを見せつつある。 1998年7月15日に欧州議会本会議が採択した『欧州議会議員選挙のための共通の諸原則を導入する選挙手続草案に関する決議』Resolution on A Draft Electoral Procedure incorporating Common Principles For the Election of Members of the European Parliament とそれが含む、欧州議会選挙法案Draft Act pursuant to Article 138(3)of the Treaty establishing the European Community. (Article 190(4)of the consolidated Treaty)は、現在理事会での採択を待っている。この法案は、EU政治を「後戻り不可能」とした画期的な出来事となる1979年6月のあの欧州議会直接選挙を導く「1976年9月20日の直接普通選挙による欧州議会の代表の選出に関する法」(The Act of 20 September 1976 concerning the election ofthe representatives of the European parliament by direct universal suffrage)から数えて、実に22年ぶりの本格的な欧州議会選挙法の改正となる。欧州議会と加盟国は直接選挙を実施した後、代表民主制原則に基づき、欧州議会の民主的正当性を深めるべく、加盟国毎にバラバラに行われている「選挙手続」の統一化に向けて動くが、その一つの結実が上述する決議に付属する法案(Draft Act)であった。特にこの法案は、欧州議会議員と加盟国の議会議員との兼任禁止、EU全域を単一選挙区とする超国家的議員の創設を打ち出すなど、経済部門における単一市場の形成に相応した単一の政治空間を創出しようとするきわめて画期的性格を持つ。本稿では、欧州議会選挙法案の形成過程とEU政治に及ぼす意義を、政治学の観点から分析した。この選挙法案が理事会で採択されれば、単一通貨「ユーロ」の創設、導入とともに、EUは「国家連合」であることをさらに否定し、「欧州連邦」にいっそう接近するものと考えられる。
- 長崎純心大学・長崎純心大学短期大学部の論文
- 1999-03-01
著者
関連論文
- 欧州議会議院規則(試訳) (1)
- European unionの政治的性格と訳語に関する考察
- サンテール欧州委員会の総辞職とEUの憲法政治 : 欧州議会の対応を中心として
- 「欧州議会議員選挙のための共通の諸原則を導入する選挙手続草案に関する決議」(試訳)
- 欧州議会選挙法改正と欧州議会の対応 : 1998年欧州議会選挙法案とEUの代表民主主義
- アムステルダム条約に関する欧州議会の決議(試訳)
- アムステルダム条約と欧州議会 : EUの立法過程への影響と欧州議会の評価を中心に
- The Role of the European Parliament in Eliminating 'Democratic Deficit' in the EU: Its Impact on the Institutional Power Balance of the EU-A View From Japan