European unionの政治的性格と訳語に関する考察
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概要
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本稿は、駐日EU代表部やマスコミが採用しているEuropean union を「欧州連合」とする訳語を分析の対象とする。つまり伝統的訳語の検討と十分な議論もないまま「統一」され、EUを表記するものとして使用されているEUの訳語と意味の問題を扱う。特に欧州統合組織の政治的性格の認識との関連で、その訳語がうむ諸問題を分析したものである。結論的にいえば、「欧州連合」の訳語はEUの政治的性格を的確に表現したものとはおよそいいがたい。特にEUを「欧州連合」と訳すことにより、国家間の協力の1形態としての「連合」(Association)や、「国家連合」(Confederation)の概念と、連邦的政治体との区別が一切つかず、.EU加盟と第3国との連合協定の識別できずに至っている。最悪なことは、「国家連合」か「連邦」かを巡り、今後も長く統く統合の方向性に関わるEU内の路線論争において、前者の陣営に予断的に与する訳語を採用することで、皮肉にも、連邦的政治体創設を意図した欧州統合の父たちの構想も理解できず、共同体法の優位や特定多数決など法的、政治的な制度的装置に裏付けられ、単一通貨創設もEU条約上に明記し、確実に連邦的政治体に発展しつつあるEUの実際と、その方向性を表現できず、EU(欧州同盟)があたかも伝統的な政府間協力機関か、単なる国家の連合体であり、更に将来に渡りそれに止まるような認識をうむ致命的欠陥を持つ訳語といえる。
- 1996-02-26
著者
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