高校剣道部の競技水準と人間形成志向
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概要
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全国高等学校体育連盟剣道部の協力を得て,熱心に指導してる剣道部の指導者441名を対象に60項目からなる「剣道指導調査」を用い,2年生部員を対象とした指導法について調査分析を試みた。結果は大要次のとおりである。1.高校剣道部の熱心な指導者は,30歳代を中心とした5段以上の保健体育科担当教諭であることがほとんどであり,全国大会レベルの試合経験者が70%にものぼることが注目される。2.過去5年間の部の最高競技歴から全国大会出楊枝と同大会非出楊枝に2分してみると,前者の指導者の方が比較的若く,5段以上の率や競技歴が高く,しかも現在の部の指導歴も長いという特徴を示している。3.剣道部の指導目的・目標などをみると,全般的に望ましい傾向を示すなかで,全国大会出場校の指導ぱ勝利志向性が強く,自主性を重んじながらも指導者が積極的に練習に関与していることが明白である。4.剣道練習に対する基本的態度の指導では,全般的に礼儀の指導,道場および防具等の管理,取り扱い方などを重視しており,剣道の人間教育的機能が注目される所以を示唆している。なかでも全国大会出場校の方昿道場外の模範的行動など人間教育的配慮の一層明白であることが注目される。5.基本動作の指導についてみる限り,部の競技水準による差は,体さばきの重視以外では認められない。6.対人的技能についてみると,全般的に合理的な指導を試みているが,全国大会出場校の方昿攻めからの打突を重視し,左拳を中心からはずさない指導を重視している。7.練習上の積極的,合理的心構えについてみると,技能水準の高い部の指導では,有効打突を追求させ,技能上優者との練習を奨励し,気力のこもった攻めの剣道,ひとの練習から学ぶ心掛け,最初の一本をゆずらない心,好機をつかんで打突する練習などの重視に特徴が認められる。以上の諸点は次のような結論を導く。すなわち,技能水準の高い高校剣道部指導の特長は,勝利志向,程合適合的剣道志向および行動規範の拡大志向に求められる。このことは,正しい剣道(理合適合的剣道)を媒介としてのみ競技水準の向上と人間形成志向が両立することを示唆するものとみてまちかいない。今後は,剣道以外のスポーツを対象として,上記仮説の検証を試みたいと考えている。
- 盛岡大学の論文
- 1990-03-15
著者
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