砲丸投げ選手に対する動作法の適用 : 運動技能の構造化とそれに基づく選手への対処
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概要
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身体能力は十分にあるのに、試合では無駄な力を入れてしまい、良い成績の上げられない砲丸投げ選手に、動作の構造の観点から訓練内容を設定し、動作法を実施した。彼に、二十日間に渡り、1セッション約50分の動作法による面接を4セッション行った。また、訓練初日と最終日、および、その一ヵ月後に心理テストとしてDIPCA3を実施した。訓練開始当初は自分の身体や動きへの気づきは漠然としたもので、動きの実感は不明確であった。しかし、面接を通して、それらは次第に明確になった。ところが、訓練終了一ヵ月後の最初の試合の成績は良くなかった。しかし、その3週間後の試合では自己ベスト記録を出すと、その後の3試合で常にベスト記録を更新した。このことは、動作構造の観点から訓練内容を設定することの有効性を裏づけるとともに、動作への気づきの鋭敏化を図ることの有効性をも裏づけた。また、DIPCA3の結果では、POST1では、PREに比べ、多くの尺度で得点が向上した。しかし、POST2では、自己実現、自己コントロール、リラックス、集中力の4尺度で大きく向上したが、他では低下した。それにもかかわらず、記録が向上したことは、心理状態に関して、砲丸投げに関わる要因のみが向上するだけで良いとも考えられる。本事例は、スポーツ技能の向上を図る際に、身体の自己制御能力の向上を図ることが重要であることを示すと考えられる。また、本事例で、訓練効果の遅延が見られたことは、動作法で獲得した華本動作を投擲動作に組み入れるために、一定の学習期間が必要な場合もあることを示すものと考えられる。
- 2003-03-31
著者
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