2つの進化論と組織行動 : ダーウィン主義とラマルク主義 (故鈴木清之輔教授追悼号)
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概要
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現在,組織や制度を動的な観点から説明しようとする,進化論的な諸研究が進展している。それらは,(1)進化経済学的アプローチ,(2)進化ゲーム理論的アプローチ,(3)進化生態学的アプローチ,といったものに分類できる。この進化論的アプローチの主唱者の中で,ネルソン=ウィンターを始め,少なからぬ人達が,ダーウィン主義の方法を否定し,ラマルク主義を標榜している。その理由としては,「偶然性を仮定するダーウィン主義は,進化を盲目的淘汰の結果と見なすため,組織や制度の進化の中心である,行為者の目標志向的な学習過程を取り扱うことはできない。そのため,社会科学における進化過程の研究は,適応的学習と,その結果である獲得形質の継承を扱うことのできる,ラマルク主義の方法によって為されねばならない」というものである。しかし,彼らのこの主張の大部分は,ダーウィン主義に対する-そしてラマルク主義に対する-誤解によるものである。サイモンの主張するようなラマルク主義的学習過程は,進化論的アプローチの研究者の期待するような進化的理論の基礎づけにはならない。また,ネルソン=ウィンター等の研究方法も,究極的には,ポピュレーション・レベルでの環境による淘汰の過程を重視したものである。組織や制度に対する進化論的アプローチは,実質的には,ダーウィン主義の範疇に入る。また認識論的には,ダーウィン主義は正当化の文脈に関係し,ラマルク主義は発見の文脈に関係する。進化論的アプローチの今後の進展を検討する際には,この観点からの吟味が,是非とも必要である。
- 慶應義塾大学の論文
- 2000-11-25
著者
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