マーケティング学説史研究の課題と方法(1)
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概要
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本稿の目的は,マーケティングの研究領域における学説史研究の現状を再構成し,斯学の認識進歩問題を取り扱うための方法論的基礎を明らかにしようとするものである。それに際して,まず,学説史研究の意義をめぐって流布している通説的見方を批判的に検討し,これら通説的見方の根底を流れている近視眼的態度を明らかにし,学説史研究の課題がメタ問題の解明であって,このメタ問題も優れて実在的問題に他ならないことを論証する。次いで,一般的にこれまで学説史研究と呼ばれてきた分野に認められるいくつかの基本的類型を指摘し,それぞれの特徴と問題点を方法論的に吟味する。第3に,上述の諸類型を背後から支えて,知識に対する特定の見方や取り扱い方を生み出してきた知識論のうち,その代表的なものについて,今日の科学史や科学社会学の分野からの知見に導かれた知識論を含め,その変遷を簡潔に概観し,それら知識論が,見掛け上の著しい相違にもかかわらず,基本的には,そのすべてが,知識,とりわけ科学的知識と呼ばれるものに対する古典的見方,つまり,正当化主義に立つ知識観を中心とする変種であったことを指摘する。以上が本号で扱われる問題である。学説史研究の場における上述の諸類型を成り立たせてきた知識観が,基本的に,知識,とりわけ科学的知識と呼ばれるものの認識論的身分をめぐって正当化主義,およびその変種に根差したものであり,それ故に,科学的知識の認識進歩基準をこれまで首尾よく扱いきれなかったとすれば,それに代わって如何なる知識論が構想されるかが問題となる。次号では,非正当化主義的知識論を代表する批判的合理主義について考察し,マーケティング研究領域における学説史研究への可能性を解明する。
- 1998-02-25
著者
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