社会保障の思想と政策 (最終講義) (藤澤益雄教授退任記念号)
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概要
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社会保障が目的概念として提唱されていた導入段階から実体概念に結実発展している現在までの展開プロセスにつき,たまたま時期が重なり合っている自己の研究歴を回顧することを通じて具体的に展望し,現代福祉社会の性格と位置を社会経済学的に考察した。産業社会の高度化にともなう市場のつまづきは,公共介入の積極化と恒常化を経済循環の安定性維持のための制度的条件とするようになっている。このなかで,生活過程に対する政府介入を代表する社会保障政策は,まず,産業社会が構造的に派生する生活不安に対処して,ミニマムベースのうえに基底的家計消費の公共化を社会全域に浸透させてきた。さらに近年では,所得水準の一般上昇のなかで進んだ家計機能の市場化を受けて,オプティマムベースを基調にする社会資本・社会サーヴィスの供給システム整備にまで政策領域を拡げていることを示した。このような社会保障の役割の実質化と広範化は,巨大な費用負担を国民に求めるが,共通ニーズの画一処理の低位を脱して,いまでは個別ニーズヘの対応を用意する以上,その負担原則は,応能のみに頼れず,受益格差を相応に反映した応益に傾いてくることをみた。
- 1996-08-25
著者
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