企業フィランソロピーに関する一考察
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概要
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企業をとりまく外部環境の変化に伴い,日本企業は単なる効率性重視経営から,社会的責任を意識した経営へ変革を迫られている。本稿は,企業フィランソロピーを倫理性に基づいて行われる企業の社会的責任,並びに社会貢献活動の総称として捉え,これまでの企業フィランソロピーに関する研究系譜を検討することにより,不況期にある今こそ,企業の社会的価値導入が不可欠であることを確認する。企業の社会性に関しては,これまでも経済の繁栄期を中心に様々な研究が進められ,具体的には,余剰利益の有効還元の手段や,経営上のリスク回避の観念,消費者の多様化への対応策といった側面から企業の社会的対応の重要性が論じられてきた。社会的責任は現代の制度的企業に課せられた根本的義務であるが,その遂行には各企業の社会的規範に対する意識・倫理性に委ねられる部分が多いため,経営環境の如何によって責任遂行のインセンティブが変容する傾向にあることは否定できない。しかし,今日のような厳しい経営環境にあってこそ,企業の社会的責任を軽視すべきではなく,新しい時代を見据えた人的資源管理の視点から,改めて社会性の包括を捉えることが重要となってきている。そして,その根拠として,最近の従業員帰属意識の動向と企業の社会性重視の姿勢との関連性についての議論をとりあげる。これらをふまえ,企業フィランソロピーに関するフレームワークを提示したのち,今後の日本企業における企業フィランソロピーの進むべき方向性についてボランティア活動の支援を中心に考察する。
- 1996-06-25
著者
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