三冊の愛の書簡集
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概要
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幸福な人生にとって欠かせない条件は,'that a man would have almost no mail and never dread the postman's knock.'である,とC. S. Lewisは書いている。有名になるにつれ,どれほど多くの手紙が彼のもとに届いたか,その返事書きがいかに彼の研究生活までも圧迫していたかをこの言葉からも察することができるのである。Lewisは日々配達される膨大な量の手紙に困惑していたが,それにもかかわらず丹念に返事を書いたということには,感嘆せずにいられない。'Letters'と名のつく創作もあるが,それを除くと,Lewisの手紙が単行本で出版されたものだけでも,年代順にあげると現在までのところ以下の7冊である。1. 1966 Letters of C. S. Lewis 2. 1967 Letters to an American Lady 3. 1979 They Stand Together-Letters to Arthur Greeves 4. 1985 Letters to Children 5. 1988 Letters of C. S. Lewis (Revised) 6. 1988 Letters. C. S. Lewis to Giovanni Calabria (Latin Letters) 7. 1999 Collected Letters of C. S Lewis Vol. 1'現在まで'といったのは,Collected Letters of C. S Lewisの2,3巻の出版はまだ準備中だからである。著作家,学者としてのLewisに関しては毎年種々の研究が発表されている。そのような中にあって,小論は,出版を意図することなく書かれた書簡を扱うものである。彼の晩年の作The Four Lovesの中でLewisは愛をΣτοργη(ストルゲー,愛情),'Ερωs(***ース,恋愛),Φιλια(フィリア,友情),'Αγαπη(アガペー,神愛)の4種類に分けて論じている。この分類を念頭に,ここでは彼自身の書簡にはどのような愛が特徴となっているかを考察したい。手紙はほぼ直接にLewisの思想,人格を表わすものである。数多い書簡集のすべてを一度に論じることは浅薄になりかねないので,ここでは以下の3編に絞ることにする。各編の出版年ではなく,それぞれの手紙の書かれた年代によると次のようになる。1. Collected Letters of C. S. Lewis (2000) (1905-31) 2. Letters to Don Giovanni Calabria (1988) (1947-61) 3. Letters to an American Lady (1967) (1950-63)この中でCollected Letters of C. S. Lewisは父親宛ての手紙が多数を占めるのでそれに焦点をあてると親子の愛Στοργηが,Letters to Don Giovanni Calabria.ではイタリア人司祭との友情Φιλιαが,Letters to Don Giovanni Calabriaではアメリカの女性に対するLewisの'Αγαπηが,それぞれ特色となっていると考えられる。以下,本論ではこの3冊の書簡集に見られるLewisの愛の特質を考察し,論じることにする。
- 2002-12-25
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