<原著>第 1 篇血清 IgE の正常値に関する検討(呼吸器疾患における血清 IgE に関する研究)
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概要
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1. 健康人215例および気管支喘息患者171例の血清IgEについてradio immuno sorbent test (RIST)を用いて測定し, 血清IgEの正常値を決定するための検討を行なった。2. 血清IgEの測定において著者の使用したRISTは1,000∿40 IU/mlの範囲内で良好な再現性を認めた。また正常人については, 15才∿89才では加令, 性別によるIgE値の変動を認めず, 食事の影響や日内変動も認められなかった。また凍結融解操作, 1年間の凍結保存, ロット番号の異なるキットの使用によるIgE値の変化は認められず, 常に安定した成績が御られた。3. 健康人215例の血清IgE値を算術平均すると312 IU/mlを得たが, この値はヒストグラムの最頻値とは一致しなかった。測定したIgE値を対数変換して得られた値を用いた幾何平均では187 IU/mlであり最頻値と一致した。この成績より本研究における血清IgE平均値はすべて幾何平均を用いた。健康人について得られたLog IgE値を正規確率紙にプロットして作成した累積度数曲線より, 健康人の中に血清IgE値に関する複数の属性集団が認められた。4. 健康者群(H)中, 正常者(N)120例, アトピー性素因を有する者(A)51例における血清IgEの平均値はそれぞれ187,485 IU/mlであり, 正規確率による検定ではLog IgE値がそれぞれ正規分布を示す事が判明した。N群とA群の比較ではp<0.0001でA群が高値であった。5. 3.で得た累積度数曲線よりN群とA群の境界域が251 IU/ml∿398 IU/mlに存在するという事実と, N群の分布の信頼限界を10%とした時に得られる分布域の上限が303 IU/ml(境界域内)であったことより, 正常範囲の上限を303 IU/mlとし, また同群のLog IgE値が正規分布しているという理由でその下限を43 IU/mlとした。6. 171例の気管支喘息患者における血清IgEの平均値は538 IU/mlであった。この群よりアトピー性喘息(AAS)89例および非アトピー性喘息(NAS)32例を撰んで血清IgEの平均値を求めた結果それぞれ791,175 IU/mlであった。AASとNASを比較するとp<0.0001でAASが有意に高値であった。AASでは血清IgEが303 IU/ml以上の高値であった症例が80.9%あったが, 一方, NASでは81.2%が正常範囲に含まれ, 著者の定めた正常範囲はアトピー性喘息患者の診断上有用であると思われた。
- 1978-03-30
著者
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