在宅高齢者の地域支援システム:配食サービスを事例とした5年間の参与観察から
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概要
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本研究の目的は,在宅高齢者を対象とした配食サービスを事例として,地域支援システムが内包する問題点を析出するとともに,サービスの担い手が一つの福祉システムにいかに組み込まれ,資源としての有効性を発揮するのかについて分析・考察することにある。調査方法は参与観察法を選択し,過去5年間,自らがボランティアの一人としてサービスの供給現場に携わり収集したデータを,質的に分析した。このシステムは,フォーマル資源としての専門職員と,インフォーマル資源としてのボランティアという,質的には異質な供給者による対等な協働関係によって成り立っていた。<BR>調査の結果,サービスを支える職員とボランティアの協働関係については,以下のような知見が得られた。第一に,ボランティアはサービス供給を支える人員として即戦力になりうるが,自発的参加に基づく性格上拘束力はなく,その流動性の高さが人材確保のマイナス要因にもなりうるということ。第二に,したがって事例とした配食サービスが抱える課題を解決するには,ボランティアの迅速な補充方法を検討するか,もしくはサービス供給の理想型を変えなくてはならないということ。第三に,施設機能を活用した形で維持される地域支援システムにとっては,基盤としてのハード資源が揺るがないことの利点を活かすためのソフト資源の加工がポイントになるということである。
- 北海道社会学会の論文
- 2003-06-20