千歳川放水路問題における受益圏/受苦圏構造
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概要
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本稿は,環境社会学の重要な一概念である受益圏/受苦圏を再検討し,初期の受益圏/受苦圏概念が抱えていた問題点を指摘し,対案を提示して概念の精緻化を行うとともに,事例への応用を通じて,新たな概念上の地平を拓くことを目的とする。<BR>初期の受益圏/受苦圏概念においては,重なり型と分離型の二つの構造が提示されていたが,概念の提唱者である梶田や舩橋による,両者を分類するための圏域設定は,十分に厳密性を持ったものとは言い難かった。本稿では,圏域を受益と受苦の和によって設定して重なり・分離を把握することを新たに主張し,また,他の構造判別の指標として,圏域の広がり,経済的代替性,事前型・事後型を設けた。<BR>事例としては千歳川放水路問題を取り上げ,受益圏/受苦圏概念の観点から分析を試みた。千歳川放水路計画をめぐる政治過程においては,以下のような特徴を把握することができた。すなわち,初期の過程において,受益圏/受苦圏構造は分離型として現れたが,問題の長期化にともなって,受益圏および受苦圏それぞれが変化し,閉鎖的受益圏の顕在化・受益圏の局地化・疑似受益圏の顕在化・潜在的受苦圏の顕在化・受苦圏の拡散などが生じている。
- 北海道社会学会の論文
- 2003-06-20
著者
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