「有機農業」を媒介にした集合行為の多元的位相

概要

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本稿の目的は,1980年代後半以降の日本の農村地域社会において,有機農業実践の政策化・制度化・ビジネス化が進展する状況の中で,「産直」・「提携」といった「有機農業」を媒介にした集合行為が存続することの意味に関する新たな解釈を試みることである。この問題を考える際に,現在支配的になっている有機農業評価の言説,および有機農業実践の政策化・制度化・ビジネス化の根拠となっている経済的機能,環境保全機能に力点をおいた有機農業実践認識枠組みに依拠しては有効な説明が不可能であることを,集合行為論の理論枠組みを援用しつつ明らかにする。その上で,「有機農業」を媒介にした集合行為を分析する上での分析枠組みと,参照ポイントを提示し,島根県邑智郡石見町における有機農業実践の展開過程を分析することから,集合行為としての「独自の意味」に関する考察を行う。ここで得られた知見は,「産直」・「提携」という集合行為としての「独自の意味」とは,制度化によって機能が特化した有機農業実践が切り捨ててしまう高齢者,女性の労働機会創出など,地域社会の諸問題対策の取り組みを柔軟に吸収するという点である。このことは,経済的機能,環境保全機能に限定されない,「有機農業」を媒介にした集合行為の有する大きな可能性を示すものと考えられる。

「有機農業」を媒介にした集合行為の多元的位相

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