清水豊子・紫琴(一) : 「女権」の時代
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概要
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樋口一葉研究の国民文学的な隆盛に引き替え、一葉に先立って自由民権の時代に登場した清水豊子・紫琴の研究は、政治思想の領域から詳しく調査されてきたものの、文学領域からは十分とはいえない。清水豊子は、民権運動のなかにいて「女権」という問題を明確にうちだした女性解放運動の先行者であるが、その思想は植木枝盛との出会いのなかで急速に形成された。だが、豊子の最初の本格的な女権論になるはずだった「敢て同胞兄弟に望む」は、これまで発表文だと信じられてきたものがじつは死後公表された草稿であることがわかり、この事実はごく狭い範囲ですでに知られてはいるが、両者の厳密な比較考察はまだおこなわれていない。両者は別物と考えた方がよいほどに異質であり、むしろその事実にこそ、男権と女権の軋轢がひそんでいる。さらに最初の小説「こわれ指輪」が、結婚における〈契約〉に焦点化されていることをめぐり、とくに植木の『東洋之婦女』の婚姻論との重なりやズレを問うた。
著者
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