大庭みな子「火草」の世界 : ネイティブ,ジェンダー
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概要
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「火草」は、大庭みな子がアラスカから日本に送った初期作品である。題材として、この小説には単純な観点では語れない困難さがあり、そのせいか、これまで触れられることはなかった。本稿では、作者のなかの、あるいは作者の背景としての「日本」「女性」というファクターが、このテクストに登場するネイティブたちの過去・現在とどのように切り結ぶのかを、修辞的な面と主題・内容の面とから考察した。極北の地アラスカは、古くからネイティブたちが独自な宇宙観にもとづいた生活文化を築いていたが、近代化する欧米の波をロシア・アメリカを通して被り、文化的に制圧されてきたことは周知のところだ。このような場所に、後発国として企業進出した日本人の妻として移住した作者は、もともと自身がジェンダーとして差異化された性であることの問題性に明晰な目を向けていた。けれどもここでさらにネイティブの問題に出会う。これは極めて今日的な課題の先取りだったと言えよう。
- 文教大学の論文
- 2000-01-10
著者
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