身振りする表層言語 : Dylan Thomasの詩的言語(I)
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概要
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Dylan Thomasの詩はしばしば難解だと言われる。確かに決して読みやすいものではない。一読してその難解さに圧倒される、あるいは辟易させられる。にもかかわらず、全体として「わかる」と感じさせるものがある。この、「難解」でありつつ「わかる」というところにトマスの詩の特質があるように思われる。トマスの詩のいわゆる「難解さ」とは言語表現の難解さであり、主題の難解さではない。生を浸食する死に対する過激な意識から紡ぎ出されるトマスの詩的言語は、互いに衝突しあい、火花を放ち、読者を幻惑させる(というよりもむしろ困惑させる)体のものであるが、その過激にして晦渋な表現のわりには、主題はむしろ単純で、誰もが共感できるものである(「わかる」ということは「共感できる」ということである)。主知主義的なエリオットや社会的意識の強いオーデンなどと比べると、その主題の幅は狭く、意外に正統的なもので、絶えず生と死の実相を見つめ、詩人としてのアイデンティティを模索するといった、きわめて内省的でpersonalなものである。トマスの詩の登場が衝撃的だったのは、その難解ながらも新鮮な言語表現の故であった。この小論では、トマスの詩的言語の特質を、“Fern Hill”という詩を例にとって、覚え書き風にまとめておきたい。
- 三重大学の論文
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