各種バイオマス原料の油化反応特性に関する基礎的研究
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概要
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I. 序論 油化反応とは,木材などのバイオマスを,還元性ガスを用いることなく,アルカリ触媒存在下,水溶液中,高温高圧(300℃,100気圧)で反応させることにより,重油状の液体物質へ変換することである。この方法は,水素や一酸化炭素などの還元性ガスを用いない,反応が水溶液中で進行するため原料の脱水,乾燥が不要などの利点を持つ。原料の乾燥は,水の蒸発潜熱のため,大量の熱エネルギーを必要とする工程であり,またバイオマスは通常水を多く含む(木材の含水率50%∿有機性廃棄物の90%以上)ことから,原料の乾燥を必要としない油化反応はバイオマスの処理,変換方法として適している。一方,近年,化石燃料の大量使用による地球規模での環境問題が懸念されており,再生可能で環境調和型のエネルギー資源であるバイオマスの有効利用が注目されてきている。バイオマスのエネルギー利用は食料,飼料,建材などへの利用と競合するので,将来的にはエネルギープランテーションの構想があるが,当面はバイオマス廃棄物や未利用バイオマスを利用することになる。また,バイオマス廃棄物のエネルギー利用は廃棄物処理,廃棄物のサーマルリサイクルの観点からも重要である。油化反応の研究は木材や下水汚泥で行われているが,多種多様に渡るバイオマス原料に油化反応を試みた例は少ない。本研究では,油化反応を様々なバイオマス廃棄物並びに未利用バイオマスに応用して個々の油化反応特性を明らかにすると同時に,多種多様なバイオマス原料と油化反応特性との関係を考察し,反応条件の総括を行った。II. 各種バイオマスの油化反応特性 各種バイオマス原料の油化反応特性についての基礎的なデータを得るために,各種操作因子(反応温度,保持時間,操作圧力,炭酸ナトリウム触媒の添加率)を変えて油化反応を行い,オイルと副生成物の生成物分布,及びオイルの性状を明らかにした。a. アルコール発酵残渣 : バイオマス廃棄物の一例として,アルコール製造工程から排出される発酵残渣4種類に対して油化反応を行い,それぞれオイルを得ることができた。オイル収率は,そば残渣約60wt%,米残渣約50wt%,麦残渣約40wt%,芋残渣約30wt%であった。原料により操作因子の影響が異なり,原料ごとに油化反応特性に関する基礎的データを得る必要性が示された。例えば,芋残渣の場合には炭酸ナトリウムは触媒効果を示してオイル収率が著しく増加したのに対し,他の残渣の場合には触媒効果を示さなかった。また,反応温度の増加と共にオイル収率は増加するが,麦残渣や米残渣の場合には反応温度300℃以上でオイル収率が飽和したのに対し,芋残渣やそば残渣の場合には飽和傾向が見られなかった。操作因子としては,触媒添加率,反応温度,保持時間の3つの操作因子が重要であり,操作圧力の影響はほとんど無いことが分かった。また,保持時間の影響は反応温度により異なり,操作因子間の相互作用を明らかにする必要性が示された。b. モデル生ゴミ : 有機性都市廃棄物へ油化反応を適応するため,性状を一定にしたモデル生ゴミを作成して油化反応を行った。アルコール発酵残渣の結果から操作圧力の影響は検討せず,一方反応温度と保持時間の関係を詳細に検討するため分散分析の手法を用いた。オイルは収率4∿28wt%の範囲で得られ,最大オイル収率は触媒添加,反応温度340℃,保持時間0.5時間の条件で得られた。分散分析は操作因子の影響を解明する有効な手段であることが示され,触媒添加率と反応温度が大きな影響を示す独立の操作因子であること,保持時間の影響は認められないが,反応温度と保持時間との交互作用が認められ,すなわち,保持時間の影響は反応温度に依存することを明らかにした。また,オイル収率と固体残渣収率との間に高い相関(両者の合計が約40wt%で一定)があることを見いだし,オイル収率の向上のためには固体残渣を生成する重合反応を抑制する必要があることが分かった。c. 微細藻類 : 微細藻類は光合成効率が高く,成長が早いことから,将来の化石燃料代替資源として期待される。微細藻類の一種としてすでに商業規模で大量培養が成功しているドナリエラを対象として油化反応を行った。JISの2種あるいは3種の重油に相当する品質のオイルを約40wt%の収率で得ることができた。一方,ここでも分散分析により操作因子の影響を検討したが,検討した反応条件の範囲では操作因子の影響は認められなかった。選定した反応条件の範囲や水準数(反応温度250,300,340℃,保持時間5,60分,触媒添加率0.5%)が適当でなかったことが考えられた。逆に,ドナリエラは油化反応し易い原料であり,250℃以下のより低温で十分油化反応が進行するとも言える。d. ホテイアオイ : 未利用バイオマスとして,生育量が多く,窒素,リンの固定化能力が高いホテイアオイの油化反応を行った。
- 1997-12-28
著者
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