<原著>障害児の自傷行動に対する介助者の処遇方法 : ある障害児の事例を通して
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概要
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本研究の目的は, 介助者の処遇がある障害児の自傷行動にどのような影響を与えるかということについて, 一つの事例を通して分析することにある.そこで, ある障害児の昼食後の額を床に打ちつける自傷行動の除去が目標行動として選択され, 次の3つの介入手続きが介助者によって導入された.介入期1では, その障害児の自傷行動に対して, 介助者が黙って正面から障害児の腕を握るという身体的拘束が実施された.介入期IIでは, 従来の食事時間を約15分から30分間に延ばし, この障害児に余裕を持って食事をさせることで満腹感を感じるような手続きが導入された.介入期IIIでは, 自傷行動に対して, 介助者が障害児の背後から強く抱きかかえる強い身体的拘束が行なわれた.その結果, 介入期1では, 身体的拘束が罰としてよりも, むしろ注目・関心を与える強化として機能し, 自傷行動が増加した.これとは逆に, 介入期IIIでは, 身体的拘束が罰として機能し, 自傷行動が減少した.また, 介入期IIにおいても, 自傷行動は減少した.これらのことから, 介助者の処遇方法によって, 障害児の自傷行動も影響を受けることが分かる.だが, このような介助者の処遇は, 昼食後の自傷行動を制止させることが出来たとしても, 昼食後以外の場面の自傷行動を完全に除去させることが出来なかった.したがって, 強力な強化子を使って, 昼食後以外の場面の自傷行動を除去することが, 今後の課題となるであろう.
- 1991-10-11
著者
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