正常体重者と肥満者との色彩,形態の選択に関する一考察 : 女子短大生のライフスタイルとの関連による分析
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概要
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基礎統計分析の結果,調査対象者の平均は年齢が18.4歳であり,身長が158.2cm,体重が50.3kgで,BMIが20.1を示した。BMIの22.1以上が13.2%,23.1以上では7%でありアンケート調査の結果では,思ったより肥満者が少なかった。ところで,肥満の自己評価では,BMIの18.1∿20.0の人の約1割が自分の体重を多すぎると判断している。また,BMIの20.1∿22.0の4分の1が過体重と判断している。実際の肥満が13%程度あるのに対し,4分の3の者が肥満を気にしていた。BMIの状況と自己評価とがかなり一致していた。正常体重者の色彩選択では,年間を通して紺・白・ブルーの順に多く,夏は白・ブルー・紺,冬には,保温性のある茶・黒・紺の順であった。他方,肥満者は,夏と冬では正常体重者の選択傾向と差異がみられないが,年間を通してみると,白・茶・ブルーの順位になっており嗜好上の違いがみられた。つぎに,スカートおよびズボンのような下衣についての色彩選択では,ともに紺系が第一位(約3分の1)を占めており,ついでブルーが約2割を占め,茶系がこれに続き両群とも第三位までは同様の選択傾向を表わしている。四位以下に色彩の嗜好上の違いがみられた。セーターでは,白系が全体の45.9%,ワンピースはブルー系が39.7%でトップを占めるなど,色彩選択でスカートやズボンとかなりの違いがみられた。また,柄の選択では,無地が全体の72.6%で第一位を占めており,うち肥満者が9.1%を占め,第二位にチェックが25.8%で両群とも差異がなかった。しかし正常体重者は第三位に花柄を,肥満者は縦じまを選択している。反対に好まない柄として両群とも水玉があげられている。襟型については,スーツではテーラードカラーが全体の79.7%と8割を占めている。ブラウスではシャツカラー80.5%が選ばれており,嗜好上で正常群,肥満群ともに差異が認められなかった。しかしワンピースでは,正常体重者は襟なしを希望しているのに対し,肥満者はシャツカラーを選択している。以上,両群の選択傾向の差異をみてきたが,BMIと他の変数との関係をみた相関分析の結果は,ワンピースの色の選択との間が0.17,襟型の選択とは0.14の有意な正の相関であり,他にセーターの色の選択が有意に近かった。つぎに,色彩・形態・柄などを選択する理由を調べたところ,第一位には「その時の気分」が答えられており全体の42.3%を占めている。第二位は「TPO」の28.7%であり正常群,肥満群ともあまり差異がみられなかった。また,健康や体調で服装を選ぶ場合,「落ちついた物を選ぶ」が全体の37.0%,うち肥満者は5.8%である。ついで「明るい物を選ぶ」が23.0%対3.1%であり,両群には嗜好上の差異が認められないが,とくに肥満者は「落ちついた物を選ぶ」傾向が強い。健康や体調によって服装を選ぶかの質問では,「時どき選ぶこともある」が全体の47.1%,うち肥満者は6.6%であるが,肥満者は健康や体調によって服装を選ぶということはあまりないようである。また髪型に合わせて服装を選ぶばあい,肥満者は正常体重者に比べて選ぶことが少ないようである。今後は標本数をふやし,この差異についてさらに分析を進め,肥満者への対応策を考えて行きたいと思っている。なお,この調査に協力された学生の皆様にお礼を申し上げます。また研究の一部については,第44回日本家政学会において報告した。
- 1993-03-31
著者
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