集団遊びの展開と指導に関する研究II : 五歳児への缶けり鬼遊びの指導を通して
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概要
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本稿は,『集団遊びの展開と指導に関する研究I-五歳児への缶けり鬼遊びの指導を通して-』(北島,1990年)の続篇として報告するものである。前年度の指導の反省に基づいて,本学保育科学生(心理班,19名)が,本年度5月に筆者の指導下で新規に実施した"5歳児における缶けり鬼遊びの指導"について,その実践内容と結果の報告,加えて,今回さらに明らかになった問題点の整理を試みるものである。経験的,試行錯誤的色彩の濃い報告書的なものであり,理論上の整理,諸変数の吟味は将来の機会へ委ねることとする。前年度"缶けり鬼遊びの指導"の結果は,必ずしも上首尾と言えるものではなかった。筆者が前稿で指摘を行なったように,その最大の原因が,「集団間関係の意識化が(5歳の園児間で)全くもって不充分であったことに由来する(P387〜P391)]ことは間違いのないことのように思われた。すなわち,缶けり鬼遊びは,河崎(1983)のパラダイムで言うところの目標水準IIIに属する集団遊びであり,"たかおに"や"かくれんぼ"のような鬼と子の一対一の関係意識(目標水準I),あるいは,一対集団全体の関係意識(目標水準II)とは異なって,鬼集団と子集団の対立関係といった集団と集団の間の関係の意識化が遊びメンバー間に生じてこないと,面白みのあるいきいきとした展開が望めない類のものであった。事実,こうした集団間の対立の意識づけが全くもって希簿であった前回の指導では,結果として,様々なルール違反(鬼につかまっているのに缶をける子,誰もつかまっていないのに缶をける子など)や遊びからの脱落者が多くみられ,味方,敵といった自集団を意識した鬼同士によるはさみ打ち行為(鬼間の連携),捕った子を助けるための工夫・手立ての行為(子間の連携)など缶けり本来のダイナミックな動きがほとんどみられなかったのである。今回は,前回のこうした指導上の基本的欠陥を是正する指導上の工夫を考え,再度,5歳児を対象とした缶けり鬼遊びの指導に取り組むことにした。加えて,効果的と思われる範囲で指導上の細部についても若干の手直しを行なった。
- 九州龍谷短期大学の論文
- 1991-03-20
著者
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