第二言語におけるNegotiation of Meaning研究の問題点について : 談話分析の観点から
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概要
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1980年代にLong(1980)によって始められたNegotiation of Meaningの研究は,大きな影響力を第二言語教育並びにその研究方法にもたらした。彼と彼の研究を受け継ぐもの(Long and Sato 1983,Gass and Varonis 1985,Pica 1987,Varonis and Gass 1987)に焦点を絞り,その研究を振り返るとともに,その矛盾と問題点を探ることを試みる。彼らは言語学習者の談話を分析し,negotiation processの特徴であり,必須要素であるfeedbackまたはnon-understanding routineに着目し,その数量的分析を試みている。彼らは,negotiation processは,言語学習者が言語修得をする時に不可欠な要素であるcomprehensible inputをより談話者の必要性に基づいたmodified interactionという形で供給すると考え,その指標となるfeedbackやnon-understanding routineがより多く観察される活動を求めることを目標にしている。しかしながら,会話分析,談話分析の立場から考察すると,彼らが数量分析したfeedbackやnon-understanding routineは,定義が不明確であり,また,談話内での機能も曖昧さが残る。彼らの問題点は,形(form)による定義,意義づけが先行し,談話内での機能(funciton)が考慮されていない点にある。本論では,談話分析をする時の重要な観点である,談話分析の統合的なモデルの必要性,談話の多層性,言語分析の普遍性という3点を挙げ,それぞれの中で彼らの研究の問題点の指摘を試みる。談話分析をする際には,談話というものをどのように考えるのかという定義とその視点を含むモデルがなくてはならない。Schifferin(1987)が提唱するモデルを借り,そのモデルに含まれる要素のどの部分が欠落し,また,談話分析のモデルの統合性の観点が欠落しているという問題点を,negotiation of meaning研究が指標とするfeedbackやnon-understandingの談話での機能の面から考察する。また,彼らの研究が仮定すると思われる談話の一元性を指摘し,談話の多層性と多層的な分析を考察する。最後に,言語学の目的である普遍性に触れ,言語学習者のinterlanguageの談話分析であっても,その分析方法,導き出すモデルは普遍性を必要とすること指摘する。