異文化適応に関する基礎研究
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概要
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本稿は留学生が直面している異文化適応の諸問題についての調査報告である。異文化適応とは異文化に滞在する者が滞在国の文化を理解し,その文化における日常生活上の適切な慣習を取り入れることとされている。しかし,来日に先駆けて"日本"という異文化の環境に適応する必要性を説かれることはあっても,具体的な適応の訓練などを受けない場合がほとんどである。その結果,適応過程における問題に対応しきれずに途中で帰国してしまう事態も生じている。そこで「異文化適応に関する基礎研究」として,日本の大学教育機関に在籍しているアメリカ人留学生38名を対象に,実際に起きている適応の問題を調査した。1994年7月に面接及びアンケート法を用いて実施した調査の結果,以下のことが明らかになった。日本語初級者(学習年数が一年未満)は言語の運用問題が大き過ぎて文化適応の問題が意識されにくいなどのように,個々の日本語の習得年数,来日の目的,日本人との交流体験の種類により適応の認識がかなり異なっている。また,適応を大きく阻んでいるものとしてストレスの問題がある。ストレスの主な原因として,公共の場で好奇な視線を向けられる,体型などの個人的なことについて大声で言われるということが挙げられた。挨拶程度の簡単な日本語や箸が使えることを大袈裟に褒められることがストレスの原因となっている事実も興味深い。最後に,留学生の異文化適応を援助するために,受け入れ側の対応として,1)来日前に行なうオリエンテーションでのストレス対策法の紹介,2)カウンセリング機関の設置を提案した。
著者
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トンプソン マイケル
Carnegie Mellon University
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山田 玲子
School Of International Cultural Relations
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トンプソン ハイジ・ファインスタイン
Williams College