瀬戸内過疎地域の高齢者生活と他出家族 : 広島県過疎山村の調査事例より
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概要
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1990年代以降,人口減少の著しい地域は,東北,中国,四国,九州をはじめ各地方に分布し,過疎ないし過疎的現象(高齢化率や高齢者単身世帯率の上昇,さらには集落の消滅,「限界集落」化など)は,以前にも増して広域化,深化しつつある。これまでの山村調査の結果を見るにおいても,過疎地域では人口の「社会減」に加え「自然減」も増える傾向にあり,近年では,人口の減少と同時に高齢化も進行している。このため,高齢者が過疎地域で,単身ないし夫婦のみで生活しているケースもめずらしくない。広島県の山村では,高齢者の多くが,近隣都市に他出している子どもや家族との交流関係を維持しながら社会生活を営む傾向がうかがえ,多世代家族間でのコミュニケーションや扶助行為が「同居」という枠組みをこえて展開されている。「高齢者のみの家族」が増加し,若年層が都市部へ流出している過疎地域の現況をふまえれば,昨今の過疎地域の構造と人的動態を把握するためには,残された高齢者と他出している家族との関係性のあり方に着目することが不可欠であるといわざるえない。本稿は,広島県の山村で実施した調査結果をふまえて「残留高齢者」と「他出家族」との交流実態を明らかにすることで,今日の「過疎問題」を,過疎地域と都市圏域との関連の中であらためてとらえなおすことを主眼としている。
- 2002-03-25