新しいProtein tyrosine phosphatase,SAP-1,SAP-2の遺伝子クローニングとその発現様式に関する研究
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概要
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ヒト胃癌に発現するProtein tyrosine phosphatase(PTP)を検索する目的で,ヒト胃癌細胞株KATO-III細胞のcDNAを鋳型とし,保存されたPTP領域をreverse transcriptase polymerase chain reaction(RT-PCR)法を用いて増幅し,その塩基配列を決定した。その結果,全く新規のPTPである,SAP(stomach cancer associated PTP)-1とSAP-2を発見した。SAP-1 cDNAは細胞内に単一のPTP領域を持ち,細胞外に8個のfibronectin type-III様構造と,多数のN-glycosylation siteを有する受容体型のPTPをコードする。SAP-1は正常の大腸や膵臓にはその発現を認めなかったが,大腸癌細胞株や膵臓癌細胞株に高度に発現していた。抗SAP-1抗体を用いた免疫染色により,SAP-1が主に細胞膜に存在することが示唆された。SAP-2 cDNAは,N末端側に2つのsrc-homology 2(SH 2)領域を有する細胞質型のPTPをコードしていた。SAP-2は脳に最も多く発現しており,抗SAP-2抗体を用いたラット脳の免疫組織染色の結果,海馬に多く存在し,さらに免疫電顕では,シナプス膜に多く存在することが明らかとなった。以上の結果より, SAP-1は細胞膜に存在し,細胞接着等の機能に関すると共に,大腸癌,膵臓癌発癌との関連が示唆された。一方,SAP-2はシナプス膜におけるシグナル伝達等に重要な役割を果たしているものと考えられた。
- 神戸大学の論文
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