コミュニケーションに問題をもつ幼児のやりとり関係拡大をめざして
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概要
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コミュニケーションに障害をもつ子,なかでも自閉児の中には,ことばを音として聞いても言語的構造をもった意味のあるものとして理解できていない子がいる。また視覚・聴覚に認知障害のある子は,外界からの事象を意味のあるものとして取り出せないため,外界と独特のかかわりを持つようになり,それが,対人関係の障害の状態をつくりだし,特異行動のように見られているものもある。自閉児は,自身の発達や適切な指導により行動の変容がみられ,状態が改善されていくことがいろいろの実践から明らかになってきているものの,対人関係・適応不全という問題は大きく残っている現状である。このことに関して,幼児期のうちに,自ら周囲に働きかけていける自発性の発現を促すことが重要でないかと考え取り組んでいった。本報告は,コミュニケーションに問題をもつO児との昨年来のかかわりを引き継ぎ,やりとり関係の拡大をめざしたものである。かかわり初期の取り組み(出会い-拒否-許容段階)では,受容的態度と相互障害状況^<1)>(子供と一緒に立ち止まる)からの出発こそが子どもとの付き合いの基礎であることを強く感じた。また,子どもが自ら働きかけられる環境の用意と,受容的共有体験が行動の変容や課題に取り組む態度の育成に不可欠なのではないかという考えに至った。
- 1990-03-12